ポオだとかホフマンだとか、……その外色々な探偵小説なども混っていました。
江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」

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先日、読書会に参加しました。今回は「短編」がテーマで、それに関する本を持ち寄り紹介し合うという流れです。私は、高校の時に本好きになるきっかけをくれたエドガー・アラン・ポー「黒猫」を紹介しました。

この小説では、天の邪鬼が一つのテーマとなっています。猫をかわいがっていたのに、猫を虐げてしまうなどという形で、天の邪鬼が現れています。また、話の最後のところでも重要な役割を果たします。

他の参加者の方は、吉本ばななやよしもとばなな(二人の方がそれぞれを紹介していました)、ケン・リュウ『紙の動物園』などでした。他の方の紹介された本を一冊は読もう、と思いました。そこで、気になったのは、江戸川乱歩の短編です。何せ、エドガー・アラン・ポーが名前の由来の作家です。しかし、一度も読んだことがありませんでした。

紹介されていた短編は、屋根裏に「何かを隠して」愉しんでいる男の話でした。本屋に行って、乱歩の小説を探しました。いろいろな文庫で出されていましたが、『全集第一巻 屋根裏の散歩者』(光文社)を選びました。例の、屋根裏に「何かを隠して」愉しんでいる男の話が「屋根裏の散歩者」だろうと思ったためです。

「屋根裏の散歩者」は、50ページに満たない話です。主人公の郷田三郎の知り合いとして、かの有名な明智小五郎が登場します。ちなみに、彼のような名探偵の元祖はポー作品におけるオーギュスト・デュパン(「モルグ街の殺人事件」など)だといわれています。また、ポーの「黒猫」などにも見られる天の邪鬼の心理も顔を出します。

この話で私が注目したのは、「青」と「蛇」のモチーフの役割です。この話で最初にそれが出てくると思われるのは、「青大将」という語です。主人公の三郎が、下宿の自室の押し入れにある天井に興味を示した場面です。「丁度この天井板の上に、何か生物が、例えば大きな青大将か何かがいるのではあるまいか」と三郎は想像します。

青大将というのは、ねずみなど狙うため、人家に潜んでいることもある、という蛇の一種です。名の通り緑に近い青色をしているものもいます。

その後三郎は、天井板の上には重りとして石があっただけだと気づきます。それで安心して、屋根裏に侵入していきます。そこでまず目につくのは、「縦に、長々と横えられた、太い、曲がりくねった、大蛇の様な棟木」です。それと直角に、「大蛇の肋骨に当る沢山の梁」が両側へ、屋根の傾斜に沿って突き出しています。それらを見て三郎は「これは素敵だ」といって、屋根裏に惚れ込んでいきます。

彼はそれまで、犯罪の真似事をするのが趣味でしたが、それに飽きていたところでした。そんな時に屋根裏の散歩の楽しさに気づき、再び生きがいを見出だしたような心地になります。その様子を三郎は、「夜更けなど、……棟木の上を伝っていますと、何かこう、自分が蛇にでもなって、太い木の幹を這い廻っている様な気持ち」だといいます。

それが高じて、三郎は覗き見をし、ある考えに至ります。その考えに興奮し彼は「真青になって、ブルブルと震え」ます。

これ以後は、顔色の「青」が何度か出てきます。最後まで読んでみると、始めに出てきた「青大将」が象徴的な意味に思われてきます。

ここまで読んできて、「あれ? 三郎、何も隠してないよね?」と思った方、その通りです。あなたは明智小五郎になれます。三郎は屋根裏に「何かを隠して」愉しむ男ではありません。どうやら、読書会で紹介された話は、乱歩の別の短編だったようです。

いずれにせよ、「明智とか、小五郎とか、コナンのでしょ?」という方には江戸川乱歩をぜひ読んでもらいたいと思います。


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