瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
崇徳院


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少女マンガ『ちはやふる』が原作の『ちはやふる 上の句』について(ネタバレをしないように)紹介する。

小泉徳宏監督作品だ。小泉監督は、YUI主演の『タイヨウのうた』(2006)が劇場長編映画初監督作品だった。

綾瀬千早(広瀬すず)は競技かるたで頂点を目指す女子高生だ。幼馴染の真島太一(野村周平)は、千早とともに高校でもかるたをすることになる。綾瀬千早がかるたと出会うきっかけとなった綿谷新(真剣佑)は、千早たちとは今は一緒にいない。しかし、いまだに連絡を取り合う仲だ。

少女マンガでは、三角関係が話をおもしろくするのだろうか。千早は新に想いを寄せているように見え、太一は千早が好きで嫉妬している。その関係でいえば、本映画は太一の心情に寄り添った描かれ方をしている。

さらに、上に掲出した「瀬をはやみ……」の歌が、三人に共通の思いを示している。岩の上を速く流れゆく滝川の水が分かれてしまってもまた合わさる。そのように、三人もかるたを続けていれば、また出会えるはずだという思いだ。

この歌は、小倉百人一首中の恋の歌として有名だ。ちなみに、作者は京都・白峯神宮の「蹴鞠の神様」で、今ではサッカーの神様ともなっている崇徳院だ。彼は、1156年の保元の乱で、後白河天皇に敗れ、皇位継承権を逸した。

三島由紀夫原作の映画『春の雪』(行定勲監督、主題歌は宇多田ヒカル「Be My Last」、2005年)でも、「瀬をはやみ……」の歌が出てくる。ここでは幼い頃に聡子(志田未来)と清顕(小堀陽貴)がその歌の上の句の札と下の句の札とを分けて持つことにする。それにより再会を誓う。

映画には、百人一首や古典知識、古語を知っているといっそう楽しめる作品がある。古来、教養を前提とした文芸が連綿と生み出されてきた。『ちはやふる』もその流れにある、正真正銘の邦画だ。

4/29から『ちはやふる 下の句』が公開されており、続編の製作も決定した。





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